卒業生インタビュー

マテリアルがあって、そこから何かが始まる。
宮田 完二郎<
宮田 完二郎Kanjiro Miyata
2001年 学部卒業
2003年 材料学専攻(マテリアル工学専攻の前身)修士課程修了
2006年 マテリアル工学専攻 博士課程修了
卒業後、東京大学 大学院医学系研究科
附属疾患生命工学センター
助教を経て、2013 年1月から現職
マテリアル工学科では片岡研究室に配属。

宮田先生は東京大学医学系研究科でドラッグデリバリーシステム(DDS)研究に携わっていらっしゃいますが、具体的なご研究内容を教えてください。

私の研究は、ナノテクノロジーとバイオテクノロジーが完全に融合したナノバイオテクノロジーという領域です。僕らの世代は、「医学」と「工学」を最初から連携させる形で学んできましたので、まさに『ナノ医療工学』ですね。近年、数多くの疾病が、遺伝子の働きがおかしくなることで生じることが分かってきています。そこで、おかしくなった遺伝子の働きを元に戻すことができる「核酸医薬」、あるいは遺伝子そのものをデリバリーするという、いわば第二世代のDDSを研究しています。

ミセルというのは、多ければ100個以上の分子が集まってカプセルのような球状の粒子を作るのですが、100 ナノメートル(nm)より50nm、50nm よりも30nm というような、ミセルのサイズを小さくすることによって、がんに劇的に効く、という結果が研究レベルで得られてきています。ミセルの大きさを小さくすることで、革新的な抗がん剤DDS の開発につながる可能性がある、ということなんです。ただ、小さくなりすぎると、腎臓から速やかに排泄されてしまったり、正常な組織にも影響を与えてしまうので、ある程度患部に行きやすいサイズにすることが重要だと考えています。そして今、ナノバイオテクノロジーによって、1nm オーダーでの精密な サイズチューニングが可能になってきています。この技術に基づいて、DDS をさらに進化させることができると確信しています。

先生の将来の夢はなんですか?

核酸デリバリーの研究分野が始まってから、既に20 年近くが経過しているのですが、実はいまだに本格的に実用化されたものはないんです。このような現状を打破するためにも、自分の研究をトリガーにして、日本発・世界初となるような革新的なDDS を世の中に出したいですね。

(2013年2月取材)

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